運行距離が本州第2位の路線バス「松阪熊野線(熊野古道ライン)」乗車記! 松阪から世界遺産の地・熊野へ | 高速バス・夜行バス・バスツアーの旅行・観光メディア [バスとりっぷ]

by バス比較なび

乗車体験記

運行距離が本州第2位の路線バス「松阪熊野線(熊野古道ライン)」乗車記! 松阪から世界遺産の地・熊野へ

三重県松阪市と世界遺産・熊野古道で知られる同県熊野市を結ぶ三重交通の路線バス「松阪熊野線」(熊野古道ライン)に乗車。約134kmの距離を4時間あまりかけて走るこの路線は、本州第2位の長さを誇る長距離路線バス。神秘的な山々と美しい海岸線が堪能でき、観光ルートとしても楽しめる路線です。

ざっくり、こんな「松阪熊野線」

  • 運行距離は約134km! 路線バスでは本州第2位の長さ
  • カップホルダー、網ポケット、手荷物フックを搭載したハイバックシート
  • Wi-Fi完備でらくらくインターネット! 一部座席にはUSBポートも装備
  • 海に山に見どころもたくさん


三重交通「松阪熊野線」 1712_01.jpg


旅の始まりは…なんと病院から!

通常、長距離路線バスの旅はバスターミナルや駅から始まることが多いのですが、今回の旅の始まりは、なんと病院から。

「松阪熊野線」(熊野古道ライン)は松阪駅から乗車することもできますが、実は一部の便が松阪地区の基幹病院のひとつである「JA三重厚生連松阪中央総合病院」(通称:松阪中央病院)に乗り入れており、今回はこちらから旅を始めることにしました。

名古屋から近鉄電車に揺られること1時間半ほどで松阪駅に到着。

JR紀勢本線・名松線と近鉄山田線が乗り入れる松阪駅
JR紀勢本線・名松線と近鉄山田線が乗り入れる松阪駅
松阪駅バスのりば
松阪駅バスのりば

駅に降り立ち待つこと数分、偶然にも熊野発松阪中央病院行き「松阪熊野線」のバスが到着しました。さっそく、このバスで松阪中央病院へ向かいます。

熊野からやってきた松阪中央病院行き「松阪熊野線」
熊野からやってきた松阪中央病院行き「松阪熊野線」

10分程でバスは松阪中央病院に到着。

松阪地区の基幹病院のひとつ「松阪中央病院」
松阪地区の基幹病院のひとつ「松阪中央病院」

敷地内では、これから乗車するバスが待機していました。

松阪中央病院で待機中の「松阪熊野線」
松阪中央病院で待機中の「松阪熊野線」

バスのりばには、通常のバス停のほかに、大型の時刻表と路線図、ベンチが設けられています。

松阪中央病院のバス停
松阪中央病院のバス停

三重交通「松阪熊野線」 松阪中央病院_03.jpg
大型時刻表・系統図


半世紀近く運行した特急バスから全国有数の長距離一般路線バスへ

ここで、「松阪熊野線」について簡単にご紹介しておきましょう。

「松阪熊野線」を運行するのは、三重県全域と愛知県、和歌山県、奈良県の一部で乗合バス事業と貸切バス事業を運営している三重交通。白地に緑のラインが後輪付近で下に届いている独特のデザインは、40年以上も地元に親しまれている伝統のカラーリングです。
もともとこの路線は、1970(昭和45)年10月1日に運行を開始した「南紀特急バス」が起源になっています。

運行開始当初は松阪~南紀勝浦間で運行され、のちにグループ会社の三重急行自動車も運行に参入しますが、その後、数度の運行区間・運行経路の変更および便数の変更が行われ、末期には松阪~尾鷲(おわせ)~熊野古道センター間が4往復、松阪~尾鷲~瀬木山間が2往復の体制で運行していました。

そして、2018(平成30)年9月30日をもって「南紀特急バス」としての運行は終了。
代わりに、沿線居住者の利便向上及び観光利用者の拡大を図る目的で翌10月1日から運行を開始したのが、松阪~尾鷲~熊野間を結ぶ「松阪熊野線」なのです。

「松阪熊野線」の系統キロは、往路134.8km、復路132.0kmですが、このキロ数は、奈良交通「八木新宮線」(大和八木駅前~新宮駅)の166.9㎞、阿寒バス「釧路羅臼線」(釧路~羅臼)の約165km、沿岸バス「豊富留萌線」(留萌~羽幌~豊富)の約164km、函館バス「快速せたな号」(函館~八雲~せたな)の約146km、くしろバス・根室交通「特急ねむろ号」(釧路~根室)の約136kmに次ぐ長さです。

本州では、奈良交通「八木新宮線」に次ぐ第2位の長さを誇ります。

なお「松阪熊野線」の運行にあたっては、バリアフリーにも対応し環境性能にも優れたハイブリッド式大型ノンステップバス(いすゞエルガ ハイブリッド)3台を導入したほか、尾鷲市から熊野市までの路線延長および全停留所(119カ所)での乗降扱いを行なうことで、利便性向上を図っています。

「松阪熊野線」に使用されるいすゞエルガ ハイブリッド
「松阪熊野線」に使用されるいすゞエルガ ハイブリッド


ドリンクホルダーやWi-Fiも完備! 中距離高速バス並の車内

今回私が乗車したのは、松阪中央病院11:30発の便。発車の約5分前にバスはのりばに到着しました。

松阪中央病院で発車を待つ三重交通「松阪熊野線」
松阪中央病院で発車を待つ三重交通「松阪熊野線」
三重交通「松阪熊野線」 1712_13 松阪中央病院にて_03.jpg
三重交通「松阪熊野線」 1712_14 松阪中央病院にて_04.jpg

では、早速乗車してみましょう。

車内は、背もたれが高いハイバックシートが並びます。

三重交通「松阪熊野線」 1712_03 車内.jpg

「松阪熊野線」の車内。背もたれが高いシートが特徴。
「松阪熊野線」の車内。背もたれが高いシートが特徴

シート背面には、カップホルダー、網ポケット、手荷物フックを装備するほか、一部の座席には携帯電話やスマートフォンの充電に便利なUSBポートも装備しています。

シート背面にはカップホルダー、網ポケット、手荷物フックを装備する
シート背面にはカップホルダー、網ポケット、手荷物フックを装備する

一部の座席にはUSBポートも装備する
一部の座席にはUSBポートも装備する

入口に設置されている整理券発行機と各種カードリーダです。

入口に設置されている整理券発行機と各種カードリーダ
入口に設置されている整理券発行機と各種カードリーダ

現金・回数券(販売は終了)で乗車の方は、整理券発行機から整理券を取り、降りる際に前方の運賃表にて運賃を確認して、整理券と一緒に現金・回数券を運賃箱に投入します。

プリペイドカード「三交バスカード」(販売は終了)で乗車の方は、乗車時と降車時にカードをカードリーダに通します。

ICカードで乗車の方は、乗車時と降車時にICカードをカードリーダにかざします。ICカードは、三重交通が発行する「emica(エミカ)」のほか、「Suica」などの交通系ICカードが利用できます。

車内ではWi-Fiサービスも提供。シートポケットに利用方法を記したリーフレットが入っています。Wi-Fiは1回の接続につき12時間利用できます。(接続回数の制限はありません)

車内ではWi-Fiも利用できる
車内ではWi-Fiも利用できる

以上、見た目は街中を走る一般路線バスそのものですが、ドリンクホルダーやUSBポート、Wi-Fiサービスなど、長距離移動客を考慮した車内設備がこの車両の特長といえましょう。

経由する市町は全部で7つ。通院利用者への配慮も

11:30定刻に松阪中央病院を発車したバスは、若干渋滞気味の松阪市内を通り松阪駅へ。JR線や近鉄線から乗り換えの方は、こちらからの乗車が便利です。熊野市行き「松阪熊野線」は4番のりばから発車します。

熊野市行き「松阪熊野線」は4番のりばから発車
熊野市行き「松阪熊野線」は4番のりばから発車

松阪駅を発車して20分程走行すると、それまでの市街地の光景から一転、のどかな風景が一面に広がります。

市街地を抜けるとのどかな風景が一面に
市街地を抜けるとのどかな風景が一面に

バスはこの先、国道42号線を約4時間かけて熊野市までひた走ります。経由する市町は、この先の多気町、大台町、大紀町、紀北町、尾鷲市と起終点の松阪市、熊野市を合わせて計7市町。いかに長い路線であるかが分かります。

松阪駅を発車して50分程で、バスは大台町内へ。

松阪駅から50分程でバスは大台町内へ
松阪駅から50分程でバスは大台町内へ

国道からいったん外れて大台厚生病院玄関前に乗り入れるなど、通院利用者への配慮もなされています。

休憩停車は2回。飲食物の購入可能な場所も

運行距離、運行時間ともに長い「松阪熊野線」では、一般路線バスでは珍しい休憩停車時間が設けられています。

休憩停車は2カ所で実施され、熊野行きは滝原宮前と後述の海山バスセンターで各15分間停車します。(松阪行きは海山バスセンターと大台町で各15分間停車)

滝原宮前にて休憩停車中の「松阪熊野線」
滝原宮前にて休憩停車中の「松阪熊野線」
三重交通「松阪熊野線」 1712_22 滝原宮前にて_03.jpg

滝原宮は正式名称を「瀧原宮(たきはらのみや)」という神社です。伊勢神宮の2つの正宮のうちの1つ「内宮」の別宮であり、参拝客が多いことでも知られています。バス停から少し離れた場所には売店やコンビニがありますので、飲食物を買うのであればこちらが便利です。

伊勢神宮の別宮「瀧原宮(たきはらのみや)」
伊勢神宮の別宮「瀧原宮(たきはらのみや)」

滝原宮前を発車したバスは、連なる山々を眺めながら南下していきます。

連なる山々を眺めながらバスは熊野市へ
連なる山々を眺めながらバスは熊野市へ
三重交通「松阪熊野線」 1712_26 車窓_04(滝原宮前~海山).jpg

やがて、バスは最初の難関である「荷坂峠」に差し掛かります。急カーブが連続する峠ですが、峠頂上からの眺めは絶景そのもの。山々の遠くには太平洋が見えます。

荷坂峠頂上からの景色は絶景そのもの
荷坂峠頂上からの景色は絶景そのもの

峠を下ると、バスは紀北町に差し掛かります。

しばらく走行すると、「マンボウ」という珍しい名前のバス停を通過。目の前にある人気の道の駅「道の駅紀伊長島マンボウ」では、紀北町の"町の魚"である「マンボウ」を使用した特産品などが数多く売られているそうですよ。

バスはマンボウを通過
バスはマンボウを通過

紀北町役場前を過ぎ、しばらく走ると、左手に太平洋が見えてきます。

左手には太平洋が
左手には太平洋が

紀北町海山地区に差しかかり、橋を渡ったところで、バスは2回目の休憩停車地である海山バスセンターに到着。こちらでも15分間停車となりました。

2回目の休憩停車地「海山バスセンター」
2回目の休憩停車地「海山バスセンター」

松阪市を発車して約2時間半。バスもラストスパートに向けてひと休みです。

海山バスセンターで休憩中の「松阪熊野線」
海山バスセンターで休憩中の「松阪熊野線」
三重交通「松阪熊野線」 1712_34 海山バスセンター_04.jpg

海山バスセンターから見渡す風景も一見の価値あり。利用者の心を癒してくれます。

海山バスセンターからの風景
海山バスセンターからの風景


カーブの多い峠や坂道を抜け熊野市内へ

海山バスセンターを発車したバスは、鷲毛(わしげ)峠を越え、尾鷲市へ。

尾鷲市内の停留所に停車し、1日2往復のみ乗り入れるビジターセンター「熊野古道センター」に立ち寄ったあと、矢ノ川(やのこ)峠、佐田坂という2つの急な峠や坂道を越えていきます。ヘアピンが続く道ですが、巧みなハンドル捌きでバスは難なく進んでいきます。

ヘアピンが続く坂道を難なく走破する
ヘアピンが続く坂道を難なく走破する
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佐田坂を越えると、バスはいよいよ熊野市へ。左手には海岸線が見えてきます。

バスは熊野市へ。左手には海岸線が。

そして、松阪市を発車して約4時間後の15:30過ぎに、バスは熊野市駅前に到着しました。

三重交通「松阪熊野線」 1712_45 熊野市駅前_01.jpg

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バスの終点は三交南紀(三重交通南紀営業所)ですが、このあとの行程も考慮して今回はこちらで下車。下車前にLED運賃表を見ると、整理券番号がなんと84番まで表示されていました。運行距離と運行時間の長さを物語ります。

熊野市駅前到着時のLED運賃表示
熊野市駅前到着時のLED運賃表示
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三重交通「松阪熊野線」 1712_44 まもなく熊野市駅前_03.jpg


バスを乗り継いで日本最長路線「八木新宮線」との乗り継ぎ旅も可能?

せっかく熊野市に来たからには、更に南下して、熊野本宮大社への玄関口でもある和歌山県新宮市へも足を伸ばしたいところ。

熊野市から和歌山県新宮市へは、JR紀勢本線でアクセスできますが、実は三重交通も約1時間おきに熊野~新宮間の路線バス「熊野新宮線」を運行しています。

さらに、新宮市からは、奈良交通(本社:奈良市)が熊野本宮大社、十津川温泉、五條を経由して奈良県橿原市の近鉄大和八木駅まで、高速道路を使わない路線では日本一の走行距離を誇る路線バス「八木新宮線」を運行しています。

奈良交通が運行する日本最長路線「八木新宮線」
奈良交通が運行する日本最長路線「八木新宮線」
奈良交通「八木新宮線」 ・960_02.jpg

つまり、三重交通「松阪熊野線」と「熊野新宮線」、そして奈良交通「八木新宮線」の3路線を使って、松阪~熊野~新宮~十津川温泉~五條~大和八木間の一般路線バス乗り継ぎ旅ができるのです。

しかも、一般路線バス日本最長路線と本州第2位の路線を同時に楽しめるというのですから、バスファンにとってはたまらない(?)乗り継ぎ旅になるのではないでしょうか。

残念ながら、運行時刻の関係で、1日で乗り継ぐことは不可能ですが、熊野市や新宮市あたりで1泊すれば実現可能ですので、バス好きの方はぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。

まとめ

今回は、松阪中央病院から熊野市駅前まで長時間の乗車でしたが、休憩停車が2回もあったおかげでトイレの心配をすることなく、思っていたよりも疲れずに移動できました。

シートの背もたれは高く、ドリンクホルダーやUSBポート、Wi-Fiサービスなど、一般路線バスにしては設備が整っていたのも印象に残りました。特に、USBポートやWi-Fiサービスは、長距離利用者にはありがたい設備なのではないでしょうか。

沿線の景色は見ごたえのある場所が多く、荷坂峠頂上からの景色や紀北町以南の海岸線は、またこのバスに乗って再訪してみたいとも思いました。

夜行バスや高速バスの旅も素晴らしいですが、のんびり景色を眺めながらのローカル路線バスの旅も違った良さがあるなあと改めて実感した、今回の「松阪熊野線」の旅でございました。

三重交通「松阪熊野線」 1712_11 松阪中央病院にて_01.jpg

三重交通 「松阪熊野線」(熊野古道ライン)


※本記事は、2019/02/06に公開されています。最新の情報とは異なる可能性があります。
※バス車両撮影時には、通行・運行の妨げにならないよう十分に配慮して撮影を行っています。

  • この記事を書いたライター

    須田浩司

    ライター、「ひろしプロジェクトWEB」の中の人 男性

    1973年釧路市生まれ、札幌市在住。自称高速バスナビゲーター。中学時代から高速バスに乗り続け、2018年2月9日に高速バス乗車1000回を達成。乗車記ブログ「ひろしプロジェクWEB」の中の人。雑誌、ネットニュースなどでライターの活動も。紙原稿、ネット原稿、同人誌、ブログなどでバス・鉄道を中心とした乗り物旅の素晴らしさを伝える活動を行っている。運行管理者資格(旅客)/国内旅行業務取扱主任者資格所有。

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