近鉄バスの2階建て高速バス 7902号さよなら乗車会に参加! 熱烈なバスファンと一緒に淡路島へ【前編】
ざっくり、こんな乗車会体験記
- 近鉄バス最後の2階建て高速バス7902号はこんなバス
- ファンに嬉しい車両撮影会「バスは僕らのアイドルです」
- さよなら7902乗車会! 明石海峡大橋&淡路SA&道の駅「あわじ」を満喫
7902号のさよなら乗車会は、当初2018年5月12日のみ、1回だけ開催される予定でした。しかし、申し込みが殺到し、キャンセル待ちがでるほどの人気となったため、急遽その翌日に2回目を追加開催することが決まったのです。両日あわせて、約60人がこのさよなら乗車会に参加しました。
2階建て高速バス7902号はこんな車両
近鉄バス7902号が導入されたのは2009年のこと。2階建て夜行高速バスとしてデビューしました。運行開始時は大阪〜中村間(高知県)をむすぶ「しまんとブルーライナー」として、後期は大阪〜宇都宮間(栃木県)を走る「とちの木号」として活躍します。
そして2018年1月に夜行高速バスとしてはめずらしい2階建て車両としての役目を終え、9年間の運行にピリオドを打ちました。多くのバスファンに惜しまれながら引退することとなったのです。
まだまだ現役で頑張れるんじゃないか? と思えるほど車内もシートもとてもきれいでした。3列独立シートで座席まわりにも余裕があって、次の出張の機会には乗車してみたいほどの車両です。
2階建てであるため、この車両には1・2階席とも天井が低いという居住性のデメリットがあることに加え、メーカーサイドにはダブルデッカー車という特殊な車両を製造するデメリットがありました。これが大きな原因となり、現在国内のメーカーは2階建て車両を製造していないのが実情です。
天井が低くても、2階席はエンジン音や振動が少ないと感じていたため、個人的には引退が残念でなりません。
ファンに嬉しい車両撮影会「バスは僕らのアイドルです」
いよいよ2階建て高速バス「7902号さよなら乗車会」の当日。5月12日はここ数日のスッキリしない天気がウソのような快晴に恵まれました。
7902号にお別れを告げるために、遠く関東から高速夜行バスに乗ってやってきた熱心なファンなどを含む30名の参加者が、週末の早朝、8時20分に近鉄奈良線「布施駅」に集まりました。
布施駅からは専用送迎バスに乗車して、7092号が待つ近鉄バス布施営業所へ興奮をおさえながら向かいます。
送迎バスは5分ほどで近鉄バス布施営業所に到着しました。普段一般の人が自由に出入りできる場所ではないので、参加者たちはすでにテンションが高めです。
今回の乗車会は7092号にお別れを告げる会であると同時に、バス車庫での撮影会も兼ねています。カメラを抱えたファンたちは今日の主役7092号をはじめ、車庫に並んだ車両の撮影に余念がありません。
それでは、この日、撮影できた車両を紹介していきます。
ハイブリットバス
近鉄バスが8台所有するディーゼル・電気式ハイブリッドバス。大阪府流入車規制に基づき環境対策の一環で導入された車両です。
近鉄エアポートリムジンバス
三菱ふそうエアロエースは、上本町〜関西空港をむすぶ路線で「リムジンバス」として運行中。近鉄らしいカラーリングが人気の車両です。
OSAKA SKY VISTA
大阪市内を観光バスとして運行中する、天井が大きくひらいた2階建てオープンデッキバス「OSAKA SKY VISTA」。赤いカラーリングでかつては夜行高速バスとして運行していました。
OSAKA SKY VISTAは大阪市内を巡る定期観光バスです。毎日4便(繁忙期は8便)が運行中。大阪を2つのエリアに分けて「うめだルート」「なんばルート」を約1時間で巡ります。
今日は、さよなら乗車会のあとOSAKA SKY VISTAで「なんばルート」を楽しむ催しもあります。
安全運転訓練車
7902号エアロキングに次いで人気を集めたのは「安全運転訓練車」。
運転技術向上を目的とした最新の装備を搭載した車両の中が見れるとあって、車両入口には見学の長い列ができました。
この車両は、「運輸安全マネジメント制度」に基づいた乗務員の安全教育のために導入されたもの。車内には、さまざまな状態をモニターする設備や管理記録するための機器が搭載され、車内を見られただけでも幸せだという参加者もいました。
さよなら7902乗車会! 明石海峡大橋・淡路SA・道の駅「あわじ」を満喫
ファンを乗せた7902号は9時30分に布施営業所を出発しました。
大阪市内阪神高速道路を走行して、大阪城・海遊館・USJを左右に見ながら湾岸線を西へ向かいます。
ロケーションのよい場所に近づくたびに、車内のアナウンスで観光ポイントが紹介されます。この声の主は観光バスガイドさんではなく、近鉄バスの専務取締役S氏。
軽快なトークと関西風ユーモアがミックスされたアナウンスに客席から笑いが絶えません。見知らぬ者同士が集まったツアーバスでは、お隣を意識して静かになりがちですが、この時は一瞬で緊張が解け和やかな空間に変わりました。
バスは神戸淡路鳴門道に入り、中央支間長1,991m、全長3,911mを誇る「明石海峡大橋」にさしかかりました。この橋は、世界最長の吊り橋としてギネスブックに認定されています。
橋を渡れば今日の目的地淡路サービスエリアに到着です。
布施営業所を出発してから1時間30分があっという間に過ぎて、兵庫県淡路島の淡路サービスエリア(下り線)に到着しました。
淡路サービスエリアのシンボル、全高65m(海抜135m)の大観覧車からは明石海峡大橋をはじめ、遠く神戸空港まで一望できます。1周約15分の動く展望台といえますね。
この日は朝から好天に恵まれていたので、普通であれば海抜135mから明石海峡大橋を眺めてみたくなりそうですが、このイベントに参加した人たちにとっては大観覧車の展望よりも近鉄バス7902号の方が魅力的なようで、30分の休憩時間もここでの撮影と次の撮影のためのトイレ休憩に費やしていたようです。
淡路サービスエリアの次は淡路島岩屋漁港へ。明石海峡大橋と7902号が1枚のフレームに収まる絶好の撮影ポイントです。このショットは今回のイベントでしか撮影できません。
最後の休憩スポットは、道の駅「あわじ」。ここは明石海峡大橋の袂(たもと)にあり、橋のスケールを目の当たりできるビューポイントです。
橋を支えるコンクリートの塊はアンカレイジと呼ばれています。これは吊り橋の両側を守る重しの役割を果たすもので、その体積は約52万立方メートルもあると説明をうけましたが、うまく想像ができません。
道の駅「あわじ」には食事処がいくつかあって、手頃な値段でランチを楽しめます。主目的は撮影であるため回転がよさそうな「駅ナカ食堂」をチョイス。
店に入ると気持ちは皆同じ!? イベント参加の人たちの多くがここで食事をとっていました。
淡路島といえば穴子。お店の名物でもある「穴子重」を注文すると、お重からはみ出すほどの穴子が! これで800円はお得でした。
道の駅「あわじ」が最後の撮影ポイントであるため、パーキングスペースの一角で参加者が惜しむようにシャッターを切ります。
お腹もふくれた13時00分。7902号は大阪へ向けて出発しました。
大阪駅で7902号と最後のおわかれ
7902号が終着の大阪駅(東梅田駅)まで帰ってきました。
グリーンの車体もこれで見納め。車両はこれから改装のため東京へ運び込まれて、2階建てオープンデッキバスOSAKA SKY VISTAの3号車として次の人生を歩むことになります。
さてこのあとは、現在運行中のOSAKA SKY VISTAに乗って大阪市内をめぐるツアーです。
この続きは後編で!
※本記事は、2018/05/15に公開されています。最新の情報とは異なる可能性があります。
※バス車両撮影時には、通行・運行の妨げにならないよう十分に配慮して撮影を行っています。
出雲義和
ライター 50代 / 男性
出版関連の仕事を25年間勤務、現在は独立。若い頃から大の旅行好き、徒歩・自転車・バイク・電車・バスなどあらゆる交通機関を使って全47都道府県を制覇。最近は海外トレッキングに出かけたりもする、「アウトドアなおじさん」。数年前より雑誌の文具手帳特集で紹介されるようになり、「文具のおじさん」でもある。
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