冬の八幡平・岩手県北バスでまだ運行していた! 日本で数少ない現役の「全輪駆動ボンネットバス」を体験 | 高速バス・夜行バス・バスツアーの旅行・観光メディア [バスとりっぷ]

by バス比較なび

乗車体験記

冬の八幡平・岩手県北バスでまだ運行していた! 日本で数少ない現役の「全輪駆動ボンネットバス」を体験

「ひよっこ」や「Always三丁目の夕日」など古い昭和を再現した映画やドラマを見ていると、SLや路面電車とともに必ずと言っていいほど登場するレトロな乗り物。それが動物のカバのような形をした「ボンネットバス」です。今や動態保存されている車体も数少なく、特別なイベントなどでしかお目にかかれないボンネットバスですが、岩手県の八幡平では今も冬季限定で定期運行されています。

ざっくり、こんな移動

  • 日本で数少ない、現役のボンネットバス
  • 「ひよっこ」や「Always三丁目の夕日」のような古き良き昭和のムードに浸る
  • 豪雪×ボンネットバスが織りなす、冬の絶景を楽しむ

今回乗車する岩手県北バスの全輪駆動ボンネットバスが走っているのは、岩手県八幡平市の八幡平マウンテンホテルと松川温泉の峡雲荘を結ぶ約7kmの区間。
旅の起点となる盛岡駅からは、東口バスターミナルの3番のりばから松川温泉行きの乗り合いバスに乗車します。


A:盛岡駅東口バスターミナル3番のりば(岩手県盛岡市盛岡駅前通1)
 ↓ 乗り合いバス
 ↓
B:八幡平マウンテンホテル(岩手県八幡平市松尾寄木第1地割)
 ↓ ボンネットバス
 ↓
C:松川温泉 峡雲荘(岩手県八幡平市松尾寄木松川温泉)


旅の当日の岩手は数年ぶりの大雪! 盛岡からさらに雪深い八幡平へ

冬季限定で、路線バスとして定期運行している岩手県北バスのボンネットバスは1日3往復。
まずは盛岡駅で「松川温泉行き」の乗り合いバスに乗車し、途中の八幡平マウンテンホテルでボンネットバスに乗り換えるという流れです。

松川温泉行きの路線バスは3番乗り場から出発
松川温泉行きの路線バスは3番乗り場から出発


運行スケジュールは次の通り。

■岩手県北バス「ボンネットバス」の運行スケジュール

 
《盛岡駅東口バスターミナル → 松川温泉》

※ボンネットバス運行区間は、八幡平マウンテンホテル→松川温泉間

盛岡駅 八幡平
マウンテンホテル
松川温泉
1  6:54発      8:31発   8:51着
2  12:12発      13:42発  14:02着
3  13:42発      16:20発  16:40着


《松川温泉 → 盛岡駅東口バスターミナル》

※ボンネットバス運行区間は、松川温泉→八幡平マウンテンホテル間

松川温泉 八幡平
マウンテンホテル
盛岡駅
1 9:45発      10:05発 11:29着
2 14:45発      15:05発 16:29着
3 16:20発      16:40発 18:09着


ボンネットバス運行期間:2017年11月25日~2018年3月31日予定(2017年度)

※ただし積雪の状況によっては変更となる場合あり


ただでさえ寒い2月初旬の岩手。さらにこの日は地元の人も「数年ぶり」というような大雪に見舞われ、最低気温がマイナス6度を下回るほどの極寒。
市街を出ると車窓の外はまさに白銀の世界で、ところどころの家の屋根には真っ白な雪がこんもりと積もっていました。

車窓は見渡す限り真っ白な世界
車窓は見渡す限り真っ白な世界

八幡平市は、日本百名山の八幡平(標高1,614m)と岩手山(標高2,038m)を望んで広がる山岳リゾート地。夏は登山客やドライブ客でにぎわい、冬もスノースポーツを楽しむ人が訪れますが、リゾートエリアからさらに山奥の松川温泉まで行くとなるとさすがに秘境感が漂います。

八幡平のリゾートエリアに到着
八幡平のリゾートエリアに到着


すごい! かわいい!! 超レトロ!!! ボンネットバスとご対面

盛岡駅から約1時間半かけて八幡平マウンテンホテルに到着。ホテルの前で待っているボンネットバスに乗り換えます。

外は5分も立っていれば雪だるまになれそうなドカ雪。

松川温泉行きのボンネットバス
松川温泉行きのボンネットバス

そして、ついにボンネットバスとご対面です!

赤いホイールも印象的
赤いホイールも印象的
バンパーには“つらら”が
バンパーには“つらら”が

岩手県北バスのボンネットバスは、いすゞ自動車製の1968年式TSD40改型。今からちょうど50年前に製造された40人乗りの4速MT車です。

かつては営林署(国有林の管理・育成を行なっていた官庁)の職員を運ぶバスとして活躍していたといいます。ちなみに「ひよっこ」のオープニングに出てくるミニチュアのボンネットバスもこれとほぼ同じ形。

岩手を一字で表した、昔の「岩」ナンバー
岩手を一字で表した、昔の「岩」ナンバー
「一般乗合」は現役の証
「一般乗合」は現役の証

現代のバスの主流は、車体の最後部にエンジンがあるリアエンジン型。それに比べて運転席の前にエンジンが置かれているのがボンネットバスの特徴です。

そのためボンネットバスは車両の先端が犬の顔のように飛び出していて、横から見ると車体に対して前後の車輪の位置がややアンバランスに感じます。

クリーム色のボディに雪の中でもビシッと映える赤の三本線をあしらった塗装と、右書きで書かれた「岩手県北自動車株式会社」の横文字が何ともクラシカル!

決して洗練されたデザインではないけれど、アーチを描く屋根のラインや窓の形など、ところどころ丸みを帯びた形は、現代のバスにはないかわいらしさを醸し出しています。

非常口は車体の最後部にある
非常口は車体の最後部にある

前日の夜に夜行バスで東京を出てから既に16時間。コレに会うためにはるばる八幡平までやって来たんです!(←川平○英風)

……ということでバシャバシャとバスの外観を撮っていると、先に乗っていたご夫婦のお父さんがやや苦笑いの表情で「もう出発の時間だよ(笑)」と手招き。
頭や肩に積もった雪の冷たさをじわりと感じながら、「すんません、すっかり時間を忘れてました」と反省を述べつつ車内に乗り込みます。

ところどころ改装が加えられつつ、歴史の蓄積を感じさせる板張りの車内
ところどころ改装が加えられつつ、歴史の蓄積を感じさせる板張りの車内
ブルーの革張りシート
ブルーの革張りシート


標高差320mの登り道を突き進む! がんばれボンネットバス!!

昭和初期に製造が開始された国産ボンネットバスは1940〜50年代に生産の最盛期を迎えましたが、1970年頃にはリアエンジン型などに移り変わって徐々に姿を消していきました。

吹雪の中を駆け抜けるTSD40改型バス
吹雪の中を駆け抜けるTSD40改型バス
レトロな「いすゞ自動車」のロゴマーク
レトロな「いすゞ自動車」のロゴマーク

昭和の終わり頃に生まれ、ボンネットバスの現役時代を知らない僕にとっては正直懐かしい気持ちはないのですが、板張りの床やゆったりとした革製シートからは、記憶の中にかすかにある昭和の情景や人情味のようなものが甦ってくるかのようです。

「『ひよっこ』に出てきたバスもこんな感じだったなぁ〜。あ〜、あの茨城弁の有村架純ちゃんかわいかったっぺ〜♪」と余計なことも頭をよぎって、シャッターを押す指がちょっと緩みがち。

歴史を感じる車内の様子

 

現代のバスよりやや低く、深く腰掛けられる座り心地のシート
現代のバスよりやや低く、深く腰掛けられる座り心地のシート
乗降口は自動扉になっている
乗降口は自動扉になっている
右折、左折、急停車の注意を伝えるサイン
右折、左折、急停車の注意を伝えるサイン
たくさんの人の荷物が置かれてきたと思われる網棚
たくさんの人の荷物が置かれてきたと思われる網棚
乗降口の近くには運転士に降車を伝えるブザーが往時のまま残る
乗降口の近くには運転士に降車を伝えるブザーが往時のまま残る


八幡平マウンテンホテルを出てわずか20分、約7kmの貴重な道のり。

この間、バスは標高530mほどの地点から標高850mの松川温泉まで約320mの標高差を登っていきます。出発して間もなく、八幡平ロイヤルホテル近くのきれいな並木道を越えると進路は登り坂に変わります。

運転席からの眺め。時折り雪が舞い上がって視界が真っ白になることも
運転席からの眺め。時折り雪が舞い上がって視界が真っ白になることも

▼運転席から撮影!


それまでも運転士さんのアナウンスが聞こえないほど大きかったエンジン音が、「ジ〜」とさらに車内に響き渡ります。それに比例して座席に伝わる振動もアップ。それでもギアは2速なんだそうですが、過酷な雪の登り道でエンジンが焼けてしまわないかとちょっと心配な気分になります。

「がんばれ、負けるな」と 心の中でエールを送ります。

最前列には運転席を間近で見られる“特等席”も
最前列には運転席を間近で見られる“特等席”も
運転席周りもレトロな印象
運転席周りもレトロな印象
こちらはいすゞバス製造の前身、川崎航空機工業・岐阜工場の製造を示すロゴ
こちらはいすゞバス製造の前身、川崎航空機工業・岐阜工場の製造を示すロゴ

バスの外は真ーーーーっ白な世界。でも、車内はヒーターの熱であったか。ボンネットバスはゆっくりと、それでいて力強く雪の地面に轍(わだち)を作りながら、じりじりと登り道を上がっていきます。

道は除雪されていますが、車窓に映るのはカーブミラーが埋まってしまうほど高く積もった豪雪。静岡生まれの私からするとここまでの大雪は綺麗を越えて壮絶な感じさえします。

屋根に雪を積もらせながら、力強く登り道を往く
屋根に雪を積もらせながら、力強く登り道を往く
途中で“苦笑いのお父さん”を見送りながら終点の峡雲荘へ
途中で“苦笑いのお父さん”を見送りながら終点の峡雲荘へ

やがて松川温泉に到着し、それぞれの宿の近くでお客さんを降ろしながら終点の「峡雲荘」へ。
今日はこの宿で一泊。温泉三昧の一夜を過ごします!

今夜の宿、峡雲荘に到着。早く温泉に入りたい!
今夜の宿、峡雲荘に到着。早く温泉に入りたい!
雪道を帰っていくバスを見送る
雪道を帰っていくバスを見送る


雪がある場所にこそボンネットバスが似合う!

折り返しの出発を待ってバスが峡雲荘に待機する間、運転士の古川さんとしばし談笑。古川さんによれば、ボンネットバスの運転に特別な免許は必要なく、大型2種免許を持っている運転士なら誰でも運転できるとのこと。

ただ、先端が細くお尻が太い車体のため現代のバスと比べると車両感覚が掴みづらく、パワステのない“生ハンドル”なので切り返しが難しいと言います。

昔は今より除雪車が小さく道幅が狭かったため、乗用車とすれ違うだけでもスリリングだったそう。

数十年に渡って運行し、年季が入った運転席
数十年に渡って運行し、年季が入った運転席
雪降りしきる中、車体にできたつららを叩き落とす古川さん
雪降りしきる中、車体にできたつららを叩き落とす古川さん

ワイパーのモーターは左右別個で動きにズレがある。運転士が叩いて動きを調整することも
ワイパーのモーターは左右別個で動きにズレがある。運転士が叩いて動きを調整することも

かつて岩手県北バスでは4台のボンネットバスを所有していましたが、現在残るのはこの1台のみ。これだけ古い車体だけに整備のことも気になりますが、部品が壊れたら今のバスのパーツを加工して使っているとのこと。

コンピュータで制御された現代のバスのように機械的な構造が少ない分、故障してもどこが壊れたのかはわかりやすいそうです。

ツアー客が来た時などは定員ギリギリの40人を乗せて走ることも。それでも「いろいろ大変なこともありますが、ほとんど運休せずにがんばっていますよ」と古川さん。

古川さんらが日替わりでボンネットバスの運行を担当している
古川さんらが日替わりでボンネットバスの運行を担当している

「冬の間に雪で埋まったバス停を除雪車が倒してしまって、雪解けの時季になって『あれ、バス停がない』なんてこともあります」と雪国ならではの“バスあるある”も。

 雪に埋もれつつも、かろうじて”主張”する峡雲荘のバス停
雪に埋もれつつも、かろうじて“主張”する峡雲荘のバス停

「やっぱりこのバスは、雪がある風景にこそ似合います」と、運転士さんのボンネットバスへの愛着も感じることができました。

古いバスを運転するには、運転士さんにとっても気を使うことが多い
古いバスを運転するには、運転士さんにとっても気を使うことが多い

峡雲荘に一泊しながら翌日の朝もボンネットバスを撮影に出かけて、走行シーンもたくさん撮れました! 訪れた日は驚くほどの豪雪でしたが、その中をたくましく走るボンネットバスは旅情感たっぷり。

走行するボンネットバス
走行するボンネットバス(後方)

雪の中を走るボンネットバス

2018年のボンネットバスは3月31日(積雪の状況によっては4月上旬までになる場合あり)まで運行中。映画やドラマで観た古き良き昭和の世界を体験してみたい人、もしくは昔乗ったボンネットバスに再び出逢いたいという人は、ぜひ八幡平まで出かけてみてはいかがでしょう。

※取材協力/岩手県北バス


※本記事は、2018/02/28に公開されています。最新の情報とは異なる可能性があります。
※バス車両撮影時には、通行・運行の妨げにならないよう十分に配慮して撮影を行っています。

  • この記事を書いたライター

    鈴木翔

    編集者兼ライター 30代 / 男性

    面白いことが大好きな編集者兼ライター。仕事やプライベートで世界各地を旅しているのでバスは常に欠かせない交通手段。これまで最高だったバス旅は、ペルーのチチカカ湖周辺からボリビアのラパスまでの「インカの聖地ルート」。最悪だったのはラオス北部の村から世界遺産のルアンパパーンまでの「12時間耐久・山岳酷道ルート」。最近、中野区から勝どきに引っ越して、なんちゃってセレブ生活を満喫中。

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