SAP×NTTグループ「hitoe(R)」の計測で判明! バスドライバーが1番緊張する場面とは?
SAPジャパンは、2017年6月6日(火)、7日(水)の2日間「SAP Tech Days Tokyo 2017」を開催しました。イベントではSAP活用事例の1つとして、NTTグループと共同で行なっている「安全運転管理」の取り組みが紹介されました。
京福バスとの実証実験でわかったドライバーが緊張しやすい場面、交通事故が発生しやすい場面とは?
最新技術を取り入れた事故対策を紹介します。
「SAP×NTTグループ」取り組みの背景
SAPとNTTグループは、2016年に発生した「軽井沢スキーバス転落事故」などの事例もある中、悲惨な事故を防ぐために何かできないか、とのことでIoTを用いたシステムの開発を行っています。
交通事故の半数以上は、安全不確認や脇見運転など「人」が原因で発生しています。これまで原因はわかっているのに、それがなぜ起きるのかメカニズムを説明するのは難しいとされてきました。
こういった背景から、SAPが開発した車両の挙動収集分析アプリケーション「CTS(Connected Transportation Safety)」と、NTTグループと東レが共同開発した「hitoe(R)」のデータを組み合わせ、交通事故を未然に防ごうとする取り組みが始められました。
主には、車両の動き・ドライバーの状態・天候などの環境データを計測してトータル的に判断し、あらゆる観点から事故の可能性を事前に察知しようとする取り組みです。
「hitoe(R)」って何?
今回の取り組みのポイントとなるのは、NTTグループと東レが共同開発したウェア型生体センサー「hitoe(R)」。
hitoe(R)は、ポリエステルナノファイバーに導電性高分子を含ませたもの。一般的なポリエステル繊維より細い繊維であるため、肌と触れる接着面積が広く、安定した生体情報を取得することができます。
電気を通すためにジェルを塗る必要もありましたが、hitoe(R)はその心配もないので、楽に着られるというメリットがあります。
hitoe(R)では、以下のようなデータを計測できます。
・心拍数
・心理的安定度
・中枢性疲労度(脳の疲労度)
そのほか、筋肉を動かすときにも電気は発せられるので、サポーター型筋電計測システムとしても利用できます。
hitoe(R)で収集された心拍データは、シャツに付いている通信装置「トランスミッター」に集約され、Bluethoothでスマートフォンの専用アプリに転送されます。
また「トランスミッター」には、加速度センサーが付いているため「傾き」も計測できます。ドライバーが寝ているとき、倒れたとき、直立したときなどをリアルタイムで知ることができるので、心拍数と組み合わせた詳細なデータを収集可能です。
最終的に、異変を察知した際の対処方法は、バス会社の運行管理者に判断が委ねられます。今後、バスの遠隔制御技術が発展を遂げた際には、SAPソフトウェアから車両を安全に停止させる指示を、車両システム側に送ることも可能になるとのことです。
定刻通りに運行できないと緊張度が高まる
ドライバーの状態、車両の動き、天候などの環境データを組み合わせて、事故防止に向けたデータ収集をしました。
実証実験から、ドライバーは休憩をとると疲労度が回復し、目的地に到着して乗客を降ろした後に車庫に移動する際には、一気に緊張がやわらぐということがわかりました。
コミュニティバスでは、時刻表通りに運行できない(下図:青線のグラフ)ことでドライバーに緊張度の高まりが見られ、遅延状況を運行管理者に連絡して「次のルートは予備のバスが運行する」という了承を得ると、緊張が和らぎました(下図:赤線のグラフ)。
また、その他の例として、渋滞の発生頻度が高く遅延しがちな区間では、遅延の有無にかかわらず緊張度が高まるといった傾向も明らかになり、運行スケジュールを変更してはどうかという案が出たとのことです。
また高速バスでは、福井~名古屋間のどの地点で疲労が溜まるのかを計測しました。
その結果から、到着地付近で疲労度が高まるので、休憩のポイントを変更して未然に事故対策を検討することになりました。
SAP「CTS」と「hitoe(R)」を活用した今後の展開
実証実験を経て、バス会社に対する具体的なサービス提供についても、2017年内の開始を目指しているとのこと。さらにはSAP「CTS」と「hitoe(R)」をより活用する展望も見えてきています。
CTSで撮影した車両外映像の解像度を高め、自動的に周辺の車やバイクとの距離や軌跡を解析する機能を検討しています。
距離や軌跡をたどることで車両間の間隔やふらつきを確認できるので、事故が起きる寸前にアラートで知らせることも可能です。
○他業界への展開
hitoe(R)は、さまざまな現場で利用できます。 建設現場で活用すれば、熱中症になる前にアラートを上げ、倒れる前に水分補給を促せます。また警備員がいる職場なら、安全管理のため緊張状態の警備員がいればすぐに駆けつける、といった対策も可能です。
オフィスの現場で取り入れれば、従業員の心理状態を確認し、心の疲労度を計測してメンタルケアにも活用することができるでしょう。
安全運転を確保することは、国を超えて共通の課題でもあります。
今後は国内外を問わず、さまざまな場面で「CTS」と「hitoe(R)」が活用されていきそうですね。
※本記事は、2017/06/21に公開されています。最新の情報とは異なる可能性があります。
※バス車両撮影時には、通行・運行の妨げにならないよう十分に配慮して撮影を行っています。
バスとりっぷ編集部
なかのひと
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