バス会社代表兼ドライバーが語る「運転手不足と賃金」への思い!
昨今、バス業界においてドライバー不足は深刻化しています。どのバス会社のサイトを見てもドライバーの求人募集は出ています。「運転手がいればより多くの区間を運行できるのに…」といった声も耳にします。では、なぜここまでドライバー不足が深刻になっているのでしょうか。
今回は、バス会社の代表取締役でありながら現役のバス運転手も務める「青垣観光バス」の檜田昭治氏にお話しをうかがいました。非常に興味深い持論を語ってくれました。
今回取材したバス会社と代表者
たびのすけバスを運行する「青垣観光バス」の代表取締役・檜田昭治(ひわだ・しょうじ)氏
ドライバー不足は何が原因?
――早速ですが、青垣観光バスの代表取締役でありながら、バスのドライバーもされていると聞きましたが本当でしょうか。
檜田氏 はい、本当です。というよりは、元々は旅行会社の代表取締役をやっておりまして。そこからいろいろあって青垣観光バスの代表も務めることになりました。大型二種の免許は代表取締役になる過程で自分で取得しました。ちなみに、偶然ですが父親もバスのドライバーをしています(笑)。
――異なる業界から来た人間として、ドライバー不足はなぜ起きていると思いますか。
まず、教習所が42万円ほどかかることが大きいです。普通免許も私が若い頃は20万円ほどで取れましたが、今は30万円近くかかります。さらに、大型二種となるとやはりハードルはありますよね。加えて、大型二種を取得するための教習所も少ないのが現状です。
あと、賃金的な問題もゼロとは言えないと思います。人の命を預かっている仕事にしては、少し安いなと率直に感じました。運んでいるものが荷物ではなく命なわけですから。飛行機のパイロットの給与が高級な理由のなかには、危険や人の命を背負っている部分があるわけで、同じように考えるともう少し高額でもと感じます。
さらに踏み込むと、2012年の規制緩和によって参入する会社が増えたことで価格競争になり、賃金に影響が出ているのもあると思います。
安全対策と価格競争の両立について
――運賃の価格競争の話が出ましたが、逆にバスの安全対策を強化することでコストはかさむわけで、板挟み状態が業界全体にあるように思いますが。
すごく難しい問題だと思うんですけど、本音を言わせていただくとすれば、安全装置をいくら導入しても、利用するお客様の目線は「見合った価格」になってしまう。比較される際に「いろんな装置があるから高い」とバス会社がうたっても、直接目に見えないものなので、そこに価値や費用を頂戴するのはできないのかなと。
逆に、業界的に安全性の高いバスが増えて、それが普通になってくるのであれば、それはそれでいいのかなとも思いますね。もちろん、利益にも直結してくるので簡単な話ではないですが、そういったことを感じます。あとは、バス会社としてどう強みを作るかも大事になってきます。
女性専用車両を昨年導入!
――では、御社の強みや特徴はどんなところでしょうか。
価格も通常の4列シートとほぼ変わらない金額に抑えているので、お客様のニーズも高いですね。リピーターも徐々にですが増えています。ただ、業界全体でも台数は少ないので認知度はまだ低いのかなと思います。
――利用者が喜ぶサービスや反応がいいものは何でしょうか。
檜田氏 夜行バスに朝の到着が早い便があるんですが、それは喜ばれることがありますね。出発もその分早いのですが、早朝から動きたい人や会議にどうしても間に合いたい人などから、到着が早いので選んだと言ってもらえることはありますね。
希少なリフト付きバス
――他社にはないサービスは何ありますか。
檜田氏 高速バスではなく貸切バスになりますが、車イスなども乗せられるリフト付きのバスがありますね。客席を取り外して最大6台の車イスとそのほかに29人が乗車できます。当社で介助者を手配して乗車していますし、乗務員も取り付けられるように研修を受けています。
後発的な事業者なので、何か売りを作りたいと思って導入しましたが、おかげさまで予想以上にお問い合わせがり、活用いただいてますね。
ただ、車両が関東と関西合わせて3台しかないので、修学旅行などで利用する時期が重なることが多いですね。せっかく利用を希望していただけるのに申し訳ないです。今後の課題でもあります。
安全への取り組み
――今、力を入れていることや取り組みはありますか。
タコグラフはスピードやアイドリングの時間、急発進や急ブレーキなどを検知して、減点式で表示するのですが、弊社では97点以上を優秀者としています。あくまで継続的に安全をキープするための一つの策ではありますが。
※自動車に搭載される運行記録用計器の一種。基本的な速度・時間・距離・エンジン回転数の変化や急加速・急減速検知も行う。
あと、事業者として運転手の賃金を上げる努力をするのはもちろんですが、いかに働きやすい環境を作るかも大事だと思います。その一つがバスの仮眠室です。バスの客室床下部分にドライバーが仮眠できるトランクのようなスペースを設けています。横になって足を伸ばせるで本当にあると楽です。
長く働いてほしいですし、これからのドライバーがバス会社を選ぶ際にも少しでも快適な方がいいと思っています。
高速バスに運転手の仮眠室があるって本当? ドライバーの“秘密基地”は驚きの快適性だった!
――今後、会社としてやりたいことはありますか。
檜田氏 いろいろありますけど、長距離だけでなく中距離路線も手掛けていきたいと思っています。あと、夜行だけでなく昼便もやりたいですし、本当にたくさんありますね(笑)。
※本記事は、2017/02/21に公開されています。最新の情報とは異なる可能性があります。
※バス車両撮影時には、通行・運行の妨げにならないよう十分に配慮して撮影を行っています。
バスとりっぷ編集部
なかのひと
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