トイレ付き3列シート車で大阪・京都~池袋間最安6,700円! 2023年から運行開始した近鉄バスの夜行バス「サテライト号」乗車記
ざっくり、こんな夜行バス
- 2023年2月23日に運行を開始
- 高速バスの運行に定評のある近鉄バスが運行
- ゆったり3列独立シートにUSBポート、トイレ付き
- 大阪~池袋間最安6,700円(2023年3月調べ)! 新幹線の約半額!
通路カーテン・Wi-Fi・USBポート完備の「サテライト号」の車内
「サテライト号」は、1989年11月に大阪と川口・浦和・大宮の間を結ぶ夜行バスとして国際興業と近畿日本鉄道が共同で運行を開始しましたが、1997年6月30日をもって廃止。ところが、二十数年の時を経て、2023年2月23日に大阪・京都と池袋・さいたま新都心・大宮間を結ぶ夜行バスとして復活したのです。
「サテライト号」を運行するのは、大阪府東大阪市に本社を置く近鉄バス。関西を起点に北は仙台・福島へ、西は九州の熊本・大分・長崎へと、全国各地へ高速バスを運行しており、運行実績も豊富なことで知られています。
今回乗車したのは、大阪発、池袋・さいたま大宮行きの運行開始初便。通称「クルーザー色」と呼ばれる緑色のカラーリングが特徴の日野セレガHDが運用に充てられていました。
早速、車内を見てみましょう。
車内は、茶系のシートモケットが目立つ3列独立シートが並びます。客席定員は27名で、最後部まで1人掛けになっています。
座席番号は最前列ドア側座席(1番)から通し番号になっています。1A、1Bといった、数字とアルファベットの組み合わせで座席番号が割り振られている夜行バスが多い中、通し番号で座席番号が割り振られている夜行バスは珍しいといえましょう。
車内中央部のトイレ前はフリースペースになっており、進行方向左側座席からトイレへの出入りがしやすくなっています。
シートは、夜行バス用の1人掛けシートを採用。シンプルな構造ながらも座り心地は硬くなく、柔らかくもない、ちょうどよい硬さです。
実際にシートを倒してみます。シートの最大リクライニング角度は約140度。かなり深く倒れます。
レッグレストとフットレスト(足置き台)です。フットレストは、靴を脱いで使用します。
各座席のレッグレスト裏面には、使い捨てスリッパが備えられています。
座席のシートポケットには、安全のしおり、車内設備、Wi-Fiの設定方法などを記したリーフレットが入っています。簡潔でわかりやすい内容が印象に残りました。
携帯電話やスマートフォンの充電に便利なUSBポートは、各座席のひじ掛け下に装備されています。
窓側座席には、座席と通路を仕切るカーテンを装備しています。まわりを気にせずに眠れ、特に女性客に好評です。
読書灯は、エアコンダクト付近に設置されています。明かりが散乱するため、消灯時の使用は必要最小限に留めたいものです。また、エアコンダクトには降車ボタンも設置されています。
トイレは、車内中央部に設置。サービスエリアでの休憩はありますが、いざという時にうれしい設備です。
トランクに荷物を預けると、「荷物引換券」が乗務員から渡されます。降車の際に必要となりますので、無くさないようにしましょう。
以上、近鉄バス「サテライト号」の車内を紹介しました。夜行バスに必要な装備はひと通り揃っており、約9時間のバス移動を快適に過ごせるようになっています。
旅の始まりは大阪有数の高速バス発着拠点から
「サテライト号」の大阪側始発地は、関西有数の高速バスターミナルとしても機能するなんばOCAT。JR難波駅に直結し、近鉄電車・阪神電車の大阪難波駅西改札口からも至近距離にあります。大阪メトロのなんば駅や南海電鉄なんば駅からのアクセスも可能です。
地下1階にはコンビニやドラッグストア、ファストフード店が入居するほか、5階には飲食店街も。乗車前の飲食に困ることはありません。
なんばOCATへのアクセス方法は、こちらの記事を参考にするとよいでしょう。
高速バスのりばと待合所は2階にあります。案内表示に沿ってエスカレーターで移動します。
のりばには発車時刻案内表示が設置されていますので、乗車前に必ず確認しておきましょう。
バスは、発車時刻の約10分前に入線します。乗務員による改札を受け車内へ。指定された座席に着席し、バスの発車を待ちます。
運行初日ということで、車内では近鉄バス社員の方から記念品が配られました。配られた袋の中には、非売品のメモ帳とプルバック式ミニカーが入っていました。
大阪駅前・京都駅からも乗車可能な「サテライト号」
関係者の見送りを受け、21:30定刻にOCATを発車したバスは、四ツ橋や肥後橋などを経由して大阪駅前(東梅田)へと向かいます。
大阪駅前(東梅田)のりばは、大阪メトロ谷町線東梅田駅7号出口を出て目の前にあります。JR大阪駅や阪急・阪神・大阪メトロ梅田駅からも地下街を経由すると徒歩5分ほどでたどり着け、主要駅からのアクセスも便利です。
大阪駅前(東梅田)のりばへの詳しいアクセス方法は、以下のリンクを参考にするとよいでしょう。
大阪駅前(東梅田)を発車したバスは、新御堂筋から名神高速道路に入り京都市内へ。大阪駅前から1時間ほどで京都駅八条口に到着します。こちらで最後の乗車扱いを行います。
京都駅八条口ののりばは、八条通りに面したF3のりば。JR京都駅の2階改札口から八条口を出てエスカレーターを降りたすぐの場所に位置します。JR各線のほか、京都市営地下鉄、近鉄京都線からのアクセスも便利です。
京都駅八条口F3のりばへの詳しいアクセス方法は、以下のリンクを参考にするとよいでしょう。
途中休憩は1カ所のみ 目覚めると都心の風景が
京都駅八条口を発車したところで、交代乗務員が到着時刻や車内設備の案内をマイクを通じて行います。わかりやすく、ていねいな案内が印象に残りました。
バスは、京都駅八条口から京都南インターへ。名神高速道路、新名神高速道路、伊勢湾岸自動車道、新東名高速道路、東名高速道路、首都高速道路と、東京の池袋まで深夜のハイウェイを駆け抜けます。
途中の開放休憩は、消灯前の1回のみとなっています。休憩場所は、滋賀県甲賀市の新名神高速道路土山サービスエリア。こちらでは23:50から15分間停車しました。
バス出入口付近に発車時刻を知らせるボードが掲げられますので、外へ出る際は事前に発車時刻を確認しておきましょう。
土山サービスエリアは、トイレや自販機、売店、コンビニ、フードコートなどを完備している新名神高速道路有数の広さを誇るサービスエリア。中でも売店、コンビニ、フードコートは24時間営業ですので、飲食物やお土産の購入も可能です。
ただし停車時間が15分とわずかですので、トイレや買い物など寝る前の準備は早めに済ませましょう。また、土山サービスエリアは上り線と下り線の共用施設になっていますので、くれぐれもバスを見失わないように気を付けましょう。
土山サービスエリアを発車したバスは、5分程で完全に消灯。翌朝到着までおやすみタイムとなります。シートを倒して目を閉じると夢の中へ。起床の案内放送まで目を覚ますことはありませんでした。
翌朝、目を覚ますと、バスは首都高速道路西池袋ランプを通過するところでした。まもなくして、乗務員から池袋駅西口に到着する旨の案内がマイクを通じて行われます。
5:20にバスは池袋駅西口バスターミナルの降車専用バス停に到着。定刻よりも20分の早着となりました。こちらでは数名の乗客が下車しました。
池袋駅西口の乗車バス停は、東北方面の夜行バスなどが発着する7番のりば。目の前には東京芸術劇場がありますので、東京芸術劇場を目印にするとわかりやすいでしょう。
池袋駅西口を発車したバスは、再び首都高速道路へ。夜明け前の街並みを眺めながら、首都高速道路をさいたま市内へ向けて北上します。
池袋駅西口を発車して40分後に、バスはさいたま新都心バスターミナルに到着します。
さいたま新都心バスターミナルは、2020年6月にできたばかりの新しいバスターミナル。敷地内には待合室とトイレ、自販機を完備していますので、ゆったりとした環境でバスを待ちたいという方や、到着後に身支度をしたいという方は、こちらのバスターミナルを利用するとよいでしょう。
さいたま新都心バスターミナルから最寄りのさいたま新都心駅へは徒歩7分程と少々歩きますが、さいたま新都心駅の目の前にはライブ会場として有名な「さいたまスーパーアリーナ」があります。終演時間にもよりますが、ライブ参加後にそのまま「サテライト号」に乗車という使い方もできますね。
そして、さいたま新都心バスターミナルを発車して20分後の6:20に、バスは終点の大宮駅東口降車バス停に到着しました。
大宮駅東口の乗車バス停は、降車バス停の向かいにある9番のりば。池袋駅西口と同様に東北方面の夜行バスなどが発着するバス停と共用しています。
消灯後、目を覚ますこともなく寝ていたため、目覚めもスッキリ。提携するバス会社の車庫へ回送されていくバスの後姿を見ながら、私は次なる目的地へと向かったのでありました。
大阪~池袋間最安6,700円! ライブ遠征にも使えそうな高速バスが誕生!
大阪~東京間をJR新幹線で移動する場合、所要時間は約2時間30分、片道普通運賃と新幹線特急料金(「のぞみ」指定席利用)の合計金額は14,720円(※通常期)となります。(2023年3月13日現在、格安移動調べ)
大阪から東京への最安料金比較
これに対して、夜行高速バス「サテライト号」は、大阪~池袋間の所要時間が約8時間10分で運賃が6,700円~9,700円。大阪~大宮間の所要時間が約9時間10分で片道運賃が7,200円~10,200円(2023年3月13日現在、近鉄バスHP調べ)です。
所要時間で比較すると、圧倒的に新幹線が有利ですが、夜行高速バスは宿泊費を節約できるのが大きなポイント。しかも、1人掛けシートに通路カーテン、Wi-Fi、充電用USBポートなど設備が充実していること、さらに大阪・京都と東京池袋・さいたま新都心・大宮の間を乗り換えなしで移動できることを考えると、「サテライト号」のコストパフォーマンスは高いといえましょう。
・ゆったり3列シートで寝て移動したい
・ライブ遠征の足として利用したい
という方に、「サテライト号」はおすすめのバスだと感じました。
二十数年ぶりに復活した近鉄バス「サテライト号」。是非とも多くの方に利用される路線に成長することを期待したいですね。
サテライト号の運行情報
※取材協力/近鉄バス
※本記事は、2023/03/17に公開されています。最新の情報とは異なる可能性があります。
※バス車両撮影時には、通行・運行の妨げにならないよう十分に配慮して撮影を行っています。
須田浩司
ライター、「ひろしプロジェクトWEB」の中の人 男性
1973年釧路市生まれ、札幌市在住。自称高速バスナビゲーター。中学時代から高速バスに乗り続け、2018年2月9日に高速バス乗車1000回を達成。乗車記ブログ「ひろしプロジェクWEB」の中の人。雑誌、ネットニュースなどでライターの活動も。紙原稿、ネット原稿、同人誌、ブログなどでバス・鉄道を中心とした乗り物旅の素晴らしさを伝える活動を行っている。運行管理者資格(旅客)/国内旅行業務取扱主任者資格所有。
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